2026.07.23

製造業でCI/CDが機能しない理由|成果を出す再設計の進め方

はじめに

現在の運用を見直したい製造業の担当者へ

本記事は、CI/CDを導入済みだが成果が出ていない製造業の開発現場(情シス・DX推進担当)に向けた内容です。
CI/CDとは、ビルド・テスト・デプロイを自動化し、品質を保ちながら継続的にソフトウェアを提供するための開発手法です。
代表的なCI/CDツールには、JenkinsやGitHub Actionsなどがあり、本記事ではJenkinsを用いた事例を交えながら、再構築のポイントを解説します。


特に以下のような方を対象としています。
・CI/CDはあるが開発スピードが上がらない
・リリースが依然として怖く、手動作業が残っている
・改善したいが、内製で進めるべきか判断できない

この記事でわかること

・CI/CDが機能しない根本原因
・内製か外部支援かの判断基準
・製造業の現場で実際に機能する再構築ステップ

本記事を読むメリット

・リリース作業の工数削減やリードタイム短縮のイメージが持てる
・自社の課題レベルを整理できる
・内製か外部支援かを判断し、社内説明/意思決定に使える材料を得られる

 

 

製造業でCI/CDの再構築が必要な3つの理由

1. 「導入しただけ」で止まる企業が増えている

CI/CDは普及した一方で、多くの現場で形骸化しています。
主な原因は、次のとおりです。
・テストが不十分で、品質を担保できない
・パイプラインが複雑で誰も触れない
・本番反映だけが手動のまま残っている
製造業ではさらに、
・ベンダー依存により内製で改善できない
・ドキュメント不足により、属人化が固定化している
結果として、「CI/CDはあるが使えない」状態に陥ります。

 

2. 開発スピードに対する要求が一段と高まった

SaaS・クラウドの普及により、頻繁なリリースが前提になりました。
その結果、
・リードタイムの短縮
・継続的な改善サイクル
が求められています。
一方で手動プロセスが残ると、
リリースまでに数日~数週間を要する/調整や確認に多大な工数がかかる
といった問題が発生し、競争力のボトルネックになります。

 

3. 「リリースが怖い」状態が組織のボトルネックになる

多くの現場では、リリース前に手動チェックや属人的判断が残っています。
特に製造業では、
・不具合がライン停止につながる
・損失インパクトが極めて大きい
ため、「変更しないこと」が最適化されがちです。
しかしその結果、
・改善スピードの低下
・競争力の低下
につながります。

 

 

CI/CDがもたらす本当の価値

CI/CDの価値は、単なる効率化ではなく、「変更を安全に素早く届ける仕組み」を作ることにあります。
これにより、リリースの不安を減らしながら、開発スピードと品質を両立できるようになります。

 

1. フィードバックの高速化と修正コストの削減

変更の結果が即座に分かることで、
・不具合の早期発見
・修正コストの削減
が実現します。


例:製造業のプロジェクト(10人チーム)
テスト自動化前:不具合検出まで平均3日
テスト自動化後:不具合検出まで平均30分以内
→ 本事例にて、修正工数を約40%削減

 

2. リリースの平準化と夜間・休日対応の削減

リリースが特別な作業ではなくなります。
・小さく頻繁に出す
・リスクを分散する
結果として、
リリース作業時間の短縮:4時間→30分/夜間・休日対応の削減
が実現します。

 

3. 属人化の解消と内製化の促進

CI/CDのパイプラインをコードとして管理することで、
・誰でも同じ手順でリリース可能
・特定ベンダーへの依存を低減
といった効果が得られます。
特に製造業では、
「特定ベンダーしか触れない」状態からの脱却が重要です。

 

 

導入事例:JenkinsによるCI/CD再構築で“止められない現場”のリリースを日常化

ある製造業企業では、工場の生産管理システムと連携するWebアプリケーションの開発を行っていました。

導入前の課題:Jenkinsがあっても本番反映は手動

CIツールとしてJenkinsは導入されていたものの、実態は以下のような状態でした。
・ビルドと一部テストのみ自動化
・本番デプロイは手動(夜間・休日対応)
・リリース作業はチェックリストベースで約4時間
・月1回リリース(障害リスクを考慮し頻度を抑制)
特に問題だったのは、工場稼働中はシステムを止められないため、リリース自体が強い心理的負担になっていたことです。

 

再構築の内容:パイプラインのコード化と段階的デプロイ

本事例では、エクシーズがCI/CDの再設計にあたり、以下の施策を段階的に実施しました。
・Jenkinsパイプラインの全面見直し(コード化)
・コンテナ化による環境差異の解消
・ステージング環境への自動デプロイ
・本番環境への段階的デプロイ(ブルーグリーンデプロイ)
・ロールバック手順の自動化

 

導入後の変化:月1回から週2回のリリースへ

導入後は、以下のような改善が見られました。
・リリース頻度:月1回 → 週2回
・リードタイム:平均5日 → 1日以内
・リリース作業時間:4時間 → 約30分
・本番障害発生率:約60%減少
また、定性的な変化も大きく、
・「リリースが怖い」という声が消失
・夜間・休日リリースが不要に
という効果がありました。

 

成功要因:本番までの自動化と環境差異の解消

このプロジェクトの成功要因は、単なるツール活用ではなく、
・“本番まで自動化する”前提で設計したこと
・環境差異をなくしたこと(コンテナ化)
・小さくリリースする前提に変えたこと
にあります。

 

自社のCI/CDは、本番運用まで見据えて設計されていますか?

CI/CDを機能させるには、ツールを導入するだけでなく、本番反映やロールバック、環境差異、運用体制まで含めて設計する必要があります。
本番デプロイだけが手動で残っている、パイプラインを変更できる担当者が限られているといった課題がある場合は、現在の構成を整理することで、再構築すべき範囲と優先順位が見えてきます。
 

自社の運用状況を整理する第一歩として、まずは8項目のチェックリストで、現在のCI/CD運用を確認してみてください。

CI/CD再構築 現状診断チェックリストをダウンロードする 
8項目・約3分で、自社のCI/CD運用と「次の一手」を確認できます。

 

 

失敗しないCI/CD再構築の4ステップ

ステップ1:ボトルネックの可視化

まずは現状のプロセスを分解し、「どこで時間やリスクが発生しているか」を明確にします。
・リードタイム(変更から本番反映までの時間)
・手動工程(人手に依存している作業)
・障害発生ポイント(不具合が出やすい箇所)
を定量的に把握することで、優先的に改善すべき領域が見えてきます。

 

ステップ2:影響の小さい領域から自動化する

次に、影響の小さい領域から段階的に自動化を進めます。
・ビルド
・単体テスト
・デプロイの一部
を対象に、「確実に回る状態」を作ることが重要です。
一気に全体を変えようとすると失敗しやすいため、小さく始めて安定させながら拡張していきます。 

 

ステップ3:本番反映まで一気通貫で自動化する

ここで目指すのは、「人の判断や手作業に依存せず、安全に本番まで反映できる状態」です。
・手動作業の排除
・ロールバック設計
・段階的リリース(カナリア/ブルーグリーン)
を整備し、“安全に失敗できる仕組み”を作ります。
特に製造業では、1つの不具合がライン停止につながるため、このステップが品質とスピードの両立を左右します。

 

ステップ4:運用をチームの仕組みにする

最後に、CI/CDを「個人の仕組み」から「チームの仕組み」へと移行します。
・ドキュメント整備
・レビュー文化
・継続的改善
を通じて、属人化を防ぎながら改善を回し続ける体制を作ります。

 

 

内製か外部支援か:意思決定のための比較軸

CI/CDの再構築においては、「内製で進めるか」「外部支援を活用するか」が重要な判断ポイントになります。
以下では、製造業の現場でよく用いられる観点に沿って整理します。

内製が向いている条件

・コスト:初期費用は抑えられるが、人件費・学習コストが増加
・期間:数か月以上を要し、長期化しやすい
・リスク:設計ミスによる手戻り、属人化の固定化
・メリット:ノウハウが社内に蓄積される

 

外部支援が向いている条件

・コスト:初期投資は発生するが、短期間で効果が出やすい
・期間:数週間〜数か月で立ち上げ可能
・リスク:ベンダー依存(ただし設計次第で回避可能)
・メリット:設計品質が高く、失敗確率を抑えられる

重要なのは、「短期コスト」ではなく「トータルコスト」で判断することです。

 

外部支援を検討すべきタイミング

以下のいずれかに該当する場合、外部支援の活用が合理的です。

①設計ができない
・ツールは触れるが、パイプライン全体の設計ができない
・改善したいが、どこを直すべきか分からない
②影響範囲が大きく失敗できない
・工場ラインや基幹系と連携している
・障害時のビジネスインパクトが大きい
③属人化が進んでいる
・特定の担当者しかCI/CDを理解していない
・ベンダーに依存しすぎている
④改善に時間をかけられない
・情シスが保守対応で手一杯
・改善が後回しになっている

逆に、以下の場合は内製でも対応可能です。
・小規模なシステムで影響範囲が限定的
・チーム内にCI/CDの設計経験者がいる
・試行錯誤できる余裕がある

このように、「技術力」ではなく
影響範囲 × 失敗許容度 × リソース
で判断することが重要です。

 

 

まとめ:CI/CDは“再導入”ではなく“再設計”のフェーズへ

止められない現場でも安全にリリースできる体制を目指す

CI/CDは「機能しているかどうか」が問われています。

特に製造業では、
・止められない現場
・レガシー環境
・ベンダー依存
という制約の中で、
現実に機能するCI/CDの設計が求められます。

エクシーズでは、
・形骸化したCI/CDの再設計
・製造業システムに適した自動化設計
・内製化を前提としたパイプライン構築
を支援しています。
最終的には、「止められない現場でも安全にリリースできる体制」への具体的な道筋に加え、自社で内製すべきか、外部支援を活用すべきかを判断できる状態を目指します。

まずは現状を整理するだけでも、改善すべきポイントや優先順位が見えてきます。
現状整理だけでも、お気軽にご相談ください。
【CI/CD再構築のご相談はこちら】

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